0歳児スマホ問題について考える:情報モラル専門家による対談報告レポート

情報モラル専門家による乳幼児スマホ対談メンバーの自己紹介と各参加者の考え

桑崎剛 (対談コーディネーター:熊本市立総合ビジネス専門学校教頭)

日本小児科医学会が「スマホに子守りをさせないで」というポスターを配布した。SNS 上で桑崎、松田、井島3者で「忙しい生活の中で、子育てにスマホを使ってしまう場面もあるのではないか?「良い/悪い」だけではなく、現状を踏まえた提言や啓発できないか?」と議論したのが事のはじまりだった。子育ての光景で、タブレットで動画を見せる、アプリを使わせるシーンはよく目にする。一昔前にあった絵本や漫画を読む光景は少なくなっていると感じる。 永坂さんに話した際に「皆で集まって話しましょう」となり、今日に至っている。この辺りの問題に日頃から熱心に取り組まれている団体の方や子育てパパの代表、関心を持って取材活動をされている記者の方も交えて企画した。


   

永坂武城 (対談主催者:一般社団法人・情報教育研究所 代表理事)

今年の始め、ある企業から未就学児に関する情報モラルのことで取材を受けた。その後、愛知県刈谷市(この4月より、市内全小中学校で21時以降のスマホ等の使用制限などを申し合わせている)で未就学児の保護者向けの情報モラルの講演依頼があり、未就学児のネットやスマホ利用に関する問題が社会的に注目を集めていると感じる様になった。あるお店で見た光景だが、小学校低学年の児童がスマホを使って店内の人や商品の写真をバシャバシャ撮影していた。保護者も店員も特に何も言わない。それを見て、与え方・使い方として『何を考え』『どのような方法』で『伝えなければならない』といけないのか、私たち大人の責任を実感した。

2004年頃は高校の生徒や教員向けの情報モラル教育を行っていた。それが低年齢化して、『0歳児のスマホ問題』ということも言われるようになり、今後は保護者の方々に提唱していくべきだと考えている。子育てを終えた先輩世代が、子育て新人世代にアドバイスを送る事も必要だ。そうは言っても、注目している人、していない人がいる。マスコミの方々にもご協力いただき社会に発信し、子育て新人世代の方々が考えるキッカケとなればと思い、その第1回としてこの対談を開催した。


   

松田直子 (座談会パネリスト:特定非営利活動法人イーランチ 理事長)

2000年当時、幼稚園や小学校低学年の子供を持つ母親がパソコンスクールを通じて知り合い、 サークル的に勉強会を開始した。その後、社会貢献活動を進めていきたいと思い、2003年にNPO 法人化しイーランチを発足。2004年から情報モラルの啓発活動を行っている。当時、小学校の情報教育の非常勤講師を行っていたが、パソコン教室では有害サイトのフィルタリングも一般的でもない時代。授業でネット検索すると望ましくない情報も表示され、活用方法と情報モラルの指導が必要だと思い、小学生向けの講座をスタートした。

すると、中学生や高校生にも、そしてその保護者にも、先生方にも研修をして欲しいとの声が増えていき、昨年は150回ほど実施している。ネットパトロールも2009年 からスタートし、静岡県内の11の高校で実施している。そのような中、先日LINE(株)から、未就学児の親子対象スマホ講座の依頼があった。日頃からスマホ子守りについて非常に心配していたので、良いチャンスを頂いたと思い、7月にセミナーを実施した。3〜6才の一人っ子をもつ保護者(ママ)に限定して21組に参加してもらい、ママたちの生の声を聞く事になった。私たち世代は幼児向けのビデオに子育てを助けられた。

今のママは、目の前にスマホがあるから使うのは当たり前だと思う。しかし、これで良いのかしら?と悩んだり、後ろめたさを感じたりもしている。先ほどの日本小児科医学会のポスターのように「良い/悪い」がハッキリしているものではなく、バランスだと思う。そのバランスの取り方が分からなかったり、人によって違うので悩んでしまう。セミナーでは悩みを吐き出す事から始まり、共感し、スッ キリしてもらってから対策を考えた。「これが正解ですよ」というものではなく、「保護者自身に考えて頂いたもの」を持ち帰ってもらった。


   

川合ちえみ (座談会パネリスト:一般社団法人・情報教育研究所 情報モラルアドバイザー)

2008年から一般社団法人・情報教育研究所の前身組織が派遣する小学校の情報教育授業において、現在のICT支援員として1年間勤務し、その後現職。 昨年、Facebookページ「考えよう 子供とネット~不安をちょっとだけ分かち合おう~」を 開設した。お母さん方の、子育てとネットの活用や情報モラルについての不安を話し合える井戸 端会議の場としている。未就学児の保護者の方(多くはママ)向けの講演依頼も頂くようになり、 そこで知りあった方の悩みを聞いたり、発信したりといった活動を行なっている。


   

井島信枝(座談会パネリスト:子どもねっと会議所 代表)

子供たちのインターネット利用に関するアドバイスや、情報モラルに関する講演活動などを2007年から始めた。小中学校でICT支援員として活動したり、Web制作なども行なっている。私自身、一般の保護者の方よりも分かっているつもりだが、子育ての経験から考えても難しい 場面があると感じている。福岡では「ノーメディア(テレビを見ない、ゲームやPCなどを使わない)」に関する取り組みや講演も行なわれているが「そうは言っても、なかなかできない」という、正論だけでは通じない部分も理解できる。親世代のデジタルに対する苦手感やコンプレッ クスを前向きなものにしていく為にも、保護者の目線も大切にしながら活動している。

子育ては24時間。子供が小さい頃は夜中に目を覚ます事もしばしば。睡眠不足の状態でも頑張っていた。家事をまとめてやりたい時などは、ビデオを見せていた。当時は「ビデオに子守りをさせるのはよくない事だ」と啓発される時代。罪悪感に苛まれながら「このくらいはいいのでは?」と悩みながら過ごしてきた。今想うと、ビデオだけに頼っていたわけではなく、子供との時間は大切にしてきた。

「ビデオ」が「スマホ」などに変わったのが今の時代。今の保護者の方、お母さん方も考えて いる。そういう方々に「ダメだ」を繰り返して追いつめてしまっては、かえって後ろ向きにさせてしまう気がする。「ネットやスマホとの付き合い方を考えるチャンスと捉えてはどうか?」と松田さんと話したところ共感してもらい、桑崎先生にも「この問題について議論しましょう」と声をかけていただいた。


   

田中康平(座談会パネリスト:株式会社ネル・アンド・エム 代表取締役)

昨年の秋まで、佐賀の小中高校へのパソコン等の導入やICT支援員を配置する会社に勤めていた。 佐賀県の情報モラル教育に関する取り組みは、タブレットなどICT環境の整備に比べて遅れていると感じている。モノを買ってもらう立場では中々声高に訴える事もできず、自立した活動を行なう為もあって起業した。

5月からはICT活用スクールをスタートさせた。放課後に小学生や園児が通ってくれている。子供たちが将来活動する社会を考えると、少子高齢化と人口減少の中、少ない人数で社会を支えなければならないことが分かっている。佐賀県には20の市と町があるが、2040年には8つの自治体が無くなるかもしれないと言われている。人が減り続けていく。今でも、優秀な子は大学進学時に県外に出てしまい、そのまま帰ってこなくなるケースが多い。

地元では仕事の選択肢も多くない。そういう将来像を見据えて、子供達にチカラを付けて欲しいと思い、キー・コンピテンシー【1自律的に活動する力 2ツールを相互作用的に用いる力 3人間関係形成力の3つの主要能力から定義されている】の育成を目標としてカリキュラムを創り、未就学児から取り組んでいる。幼稚園に出向いてのICT活用のサポートも行なっている。1台のiPadを共有してパズル遊んだり、プレゼンしたり、3人グループに1台を与えて協力して絵本や折り紙を創るといった活動も始めている。
 僕の仕事は、佐賀を拠点にしながら東京などへ出張する事も多い。そうやって地元で暮らしながら活動する為にICTの力を借りている。子供は小学校6年と幼稚園の年長クラス6歳児の人。今日はパパ代表の視点でも考えていきたい。


   

 

【座談会当日の意見等のレポート】

  1. 情報モラル専門家による乳幼児スマホ対談メンバーの自己紹介と各参加者の考え
  2. 子育ての中心世代は、情報モラル教育を受けていない
  3. スマホ育児の問題点の提言、そういわれても子育てママの事実は・・・
  4. 0歳児スマホ問題の議論の方向性と論点を整理してみると
  5. スマホ/タブレット時代の「幼児のしつけ」は、どのようにしたら良いのか?
  6. 子育て、しつけの“あるべき姿”とは?モノサシで計れるものなのか?
  7. 不易と流行、子供は変わったのか
  8. 子育てママには、子供と共に成長して欲しいと願う

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